通関士勉強と映画と趣味のブログ

きびしい道でもゆっくり歩けば足跡が残る(by書道家・時重泰香)

映画『ハード・ウェイ』資料集⑪小説 その19 モスを立ちつくさせたニックの氷の目と鋼鉄の声

『ハード・ウェイ』J.R.ロビテイル/堀内静子 訳 二見文庫(1991)

 

氷のような目というとモスがいつもニックに向けていた目ですが、ニックはモスに騙された怒りによって、この目を身に付けます。

殴られ続けたモスがニックを床にたたきつけ、警官になるのがどんな気分か、誰かを殺したらどんな気分になるのかわかったんだから、さっさとハリウッドへ戻って利用したらどうだと、氷のような目で見すえ、侮蔑をにじませた声で言います。

それを聞いたラングは耳を疑うようにモスを見つめ、身体を起こしてほこりをはらうと、氷のように冷ややかで侮蔑に満ちた目で見返し、鋼鉄に似た冷静な声でこう言います。

p.291

「きみになるのがどんな気分かもわかったよ、モス。みじめな男だ。スーザンもぼくも、きみを理想化していた。たぶん、ぼくたちはきみになりたいんだろう――たぶん、それが問題なんだ。ぼくたちは、きみみたいにはなれない。きみみたいになることは、誰にも心をひらかないということだからだ」 

 ここからさらに声が冷静になります。

p.291~292

「たぶん、それが警官になることの一部なのだろう。だが、もしそうなら、そんなものはきみひとりで大事にすればいい」

ラングは向きを変え、歩み去った。モスはラングの後ろ姿を見つめ、そこに立ちつくした。 

 

あのモスが立ちつくすほどのショックを受けるんです。言われた内容も当然ショックですが、ニックがモスのような冷たく侮蔑をにじませた目を真似て突き放したことで、まるで鏡を見るように自分を客観的に知ることができ、そういう目を向けられたほうの寂しい気持ちを知ることができたのではないかと思います。