『ハード・ウェイ』J.R.ロビテイル/堀内静子 訳 二見文庫(1991)
ニックがどうやって手錠をソファベッドから外したかを映画ではやっていませんが、小説はちゃんと書いてくれています。
モスは、「ニック・ラングがフーディみたいにあの状態から抜け出す可能性はゼロに近い」と上機嫌になっていて、どうやらニックにソファベッドを引きずるほどの力があると思っていなかった模様。自業自得ですが、床も家具もめちゃくちゃになります。
外すまでの過程は映画よりだいぶ長いです。途中で家主さんに見られ誤解されるというハプニングもあります。
- 朝起きて、右の手首が手錠でソファベッドの金属製の枠につながれていることに気づく
- モスを呼ぶが答えがなく、出かけたとわかりパニック
- ソファベッドの横のランプに立てかけてあるメモ<ここにいろ>(大きなブロック体)に気づく
- ソファベッドから降り、手錠でつながれた腕をあげてソファベッドを持ち上げ、床に勢いよく落とす動作を何度も繰り返すが、効果なし
- トイレにも行けない問題に気づく
- ラグがめくれても、椅子が倒れても、重いソファベッドを引きずりゆっくり前進
- 電話が掛かってきて、モスかと思って怒りながら受話器を取ったらエージェントのアンジーだった
- 荒っぽくソファベッドを引っ張った勢いでふっとんだランプを自由な手で受け止める
- 電話を切ってランプを床に投げて粉々にし、仕返しをした満足感を味わう
- またトイレに行こうとしたら、また電話が掛かってきて、向きを変える時に小さな本棚が倒れる
- 今度こそモスだと思って怒りながら取ったらスーザンで、ランチの誘い
- 電話を切り、枠を壊そうとしていたら、家主のミセス・ケプラーが入ってくる
- ケプラーにとっておきのハリウッド・スマイルで手伝いを頼んだが、ブリーフを履いただけの全裸に近いニックがソファベッドに手錠で繋がれている姿に肝をつぶし、出ていってしまう
- 「お願いだ。助けてくれ。変なことをしているわけじゃないんです!」とわめくが、ケプラーは戻ってこない
- 超人的と自分では思える力を振り絞って、なんとかトイレにたどりつく
- トイレから出て、ソファベッドを引きずってキッチンへ
- 引出しにあった金槌とねじまわしとプライヤーでベッドの枠全体をばらばらに
- 手首の手錠は外せず、そのまま服を着てスーザンと約束したレストランへ
- 遅刻
- 「ベッドから出られなかったの?」と何も知らないスーザンから無邪気に訊かれ、「正確に言うと、すこしちがうけど」と言って仕事がいっぱいあったとごまかす
なお、ばらばらになったソファベッドは、モスが組み立て直しますが、完全に元通りにはなりません。
p.316
ソファベッドはまた組立てたのだが、あまりうまくいかなかったし、ランプもふたつこわれ、壁には黒くこすれた跡が残っていて、エンドテーブルのひとつは、手錠をかけられた映画スターとの戦いの痕跡を残していた。モスは部屋を見まわして吐息をもらし、本棚の本をまっすぐになおした。できるだけのことはやったと思い、キッチンへいって、フリーザーからディナー用の冷凍食品をとりだした。
モス、怒るというより後悔している感じですかね。