『ハード・ウェイ』J.R.ロビテイル/堀内静子 訳 二見文庫(1991)
スラム街でチンピラにバラバラにされた車の代車は、映画では車体が低くて長い白黒の車で、この車を見た街の人は、「すげぇ、ド派手~!」(DVD吹替。ちなみにビリー役の大塚芳忠さん)とびっくりしています。パンフレットの「ストーリー」にはこう書いてあります。
車はチンピラに襲われてバラバラにされてしまう。そんなモスに、ラングは自分の車を提供
「自分の車を提供」というのは、DVD吹替のニックのセリフ「そんなに派手だったかな、この車」を聞いて書いたのかもしれません。
しかし、Blu-ray吹替は「なぁ、この車、マフィアから押収したのかい?」 、字幕は「この車しかなかったの?」、英語はこうです。
You sure impound didn't have anything a little more low profile?
つまり、車を選んだのはモスで、なんでこんな派手な車をわざわざ選んだの?って冗談ぽく聞いたわけです。ワリオも同じ疑問を持ちました。
一方、雑誌「ROADSHOWロードショー」1991年6月号の記事「新生マイケル登場!ぶっとびのアクション・コメディーだ!ハード・ウェイ」(文:金子裕子)の4~5ページ目「ニック・ラングあの手この手アプローチ大作戦」にはこう書いてあります。
⑧とにもかくにも、ネバーギブアップ!
捜査にしか興味がなく”犯人逮捕オタク”ともいうべきジョンは邪魔者ラングをあの手この手で追い払おうとする。無謀な車に乗せて揺さぶり、ヨタ者ばかりのバーに放り込む、なんてのは序の口。
「無謀な車で揺さぶり」?
ニックそんなに嫌そうじゃなかったけどなぁ、と疑問が募るばかり。
その疑問が、小説で解けました。
p.102~p.103
ニック・ラングは助手席で身を縮めた。通行人にじろりと見られるたびに、身のおきどころがなかった。
「モス」ラングはおそるおそる訊いてみた。
「ほんとにたしかなのかい、これよりもっと……何というか……目立たない車がないっていうのは」
ひどい状態になった車を片づけるのに2時間かかった。その2時間の間に、制服警官をつかまえ、腹をかかえて笑う警官たちに頼んで、レッカーを呼び、残骸を運んでもらい、説明のための書類を書きあげ、新しい車をまわしてもらったのだ。(中略)彼の理解を絶していた。10年前のリンカンで、ほとんど地面につきそうなほど車体が低く、3種類のエレクトリック・ブルーに塗られている。(中略)その車は、まさに恥さらしな乗り物だった。
映画より相当派手です。小説のニックはかなり恥ずかしがっている様子。
車内のアクセサリーはこんな感じ。
- 安っぽいベロアのシートカヴァー
- にせものの豹の毛皮を張ったダッシュボード
- けばだったダイスがぶらさがったバックミラー
後でこの車に乗ったスーザンの娘ボニー(小学生)もこんなことを言っています。
- 胸くそ悪い車だ
- ひどく下品だ
- こんな車に乗っているところを友だちに見られたら恥ずかしくて死んじゃう