『ハード・ウェイ』J.R.ロビテイル/堀内静子 訳 二見文庫(1991)
映画での呼び方と違う。ニック→モスは「きみ」、モス→ニックは「あんた」が一番多い。
映画を観た後だから違和感が。モスの年齢は書いていないけど、警部補という階級からすると、実はあまり年齢変わらないのかもしれない。モスの同僚のケインいわく「めったにない優秀な警官」で、伝記や歴史の本もたくさん読んでいる勉強家。早く出世していてもおかしくない。
一番驚いたのが、タイトルにも書いた通り、「ニック」と呼んだのが1回だけなこと。映画では、車の荷物を取られてニックがモスに取り戻してくれと頼んだ時に、
「いいかニック。ニックって呼ぶぞ」(DVD吹替)
って了承もらってから「ニック」って呼んでて、「ラング」って呼んだのはニックがスーザンを演じているときだけ。
でも、この1回が、めちゃくちゃ感動する。そのシーンは、この記事の最後に。
ニック→モス
「きみ」「モス」「相棒」「ジョン」「あんた」「おまわりさん」
- 「ジョン」(ピザ屋にいる時とスーザンを演じている時を除く)
「時間がかかって悪かったな、ジョン……つるしの服を買う習慣がないもんで」
「なあ、ジョン、どうしても話しておきたいことがあるんだ……スーザンのことだけど」
何か必要だったら、ジョン、何でもいいんだが、とにかく、金でも、腕のいい弁護士でも、裁判に出るための新しいスーツでも、必要だったら知らせてくれ」
- 「あんた」p.290の2行目
「あんたはいったいどうなってるんだ、モス。人間なのか?ぼくはただあんたの助けを求めただけだぞ。ちくしょう!」
- 「おまわりさん」p.314の15行目
「ケツになるよりいいよ、おまわりさん」
モス→ニック
「あんた」「ラング」「パートナー」「レイ」「きみ」「スーザン」「ハリウッド」「ニック」
- 「きみ」p.135の5行目、p.163の13行目、p.166の2行目、p.343の12行目
- 「ハリウッド」
p.119の10行目
「そいつはソファベッドと呼ばれている、ハリウッド」
じゃあ、やつをつかまえろよ、ハリウッド」
p.244の2行目
「あんたのためにやると思うなよ、ハリウッド。おれのケツも危ないからだ」
「うぬぼれるんじゃないぜ、あんたはまだ、ケツに刺さったトゲなんだからな、ハリウッド」
ラングはにっこりした。「ケツになるよりいいよ、おまわりさん」
ふたりはユーモアの漂う目を見交わした。
- 「ニック」p.341の9行目だけ
「そうとも、ニック」モスの頬を涙がつたった。「あんたはりっぱな警官になれる。あんたは……度胸がある」
あのモスが泣きながらニックをかたく抱きしめるとは!映画以上の展開に驚きと感動で思わずしゃがみこんだワリオ(立って読んでいた)。
しかし、ニックは実は撃たれていない。モスが自分を騙すのに使った空砲を使って撃たれたふりをしただけ。前からやりたかった臨終シーンを演じたニックは、目をぱっとひらいて、”澄んで、生き生きとして、からかうようにきらきら光っている"目で嬉しそうに訊く。
「本気かい」「ぼくに度胸があるって、本気で思うのかい」
モスは憤慨して抱いていたラングを落とす。で、また「ラング」「あんた」に戻る。ただ、モスはニックが生きてたことが嬉しくて、抑えようとしても顔がほころんで、笑ってしまう。
まるで日本の漫画みたいな描写。映像化されていないシーンなのに、目に浮かぶようだ。